コバナシ//明快に面白い! シュールはなし! 爆笑・お笑い・ショートショート・ジョーク短編集
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2007/06/12 (Tue) 戦場のバレンタイン

第二次世界大戦航空機 [ポスター] (-)  200X年2月14日某国国境付近 。

第3部隊が本体からはぐれてすでに10時間。その間多くの同僚が死んだ。残ったのは三人。ケビン、マリア、そして私だ。三人の疲労はすでにピークに達していた。

私は支給されていたチョコレートをポケットから取り出した。

それは小さな白い円筒状のパッケージに小さな錠剤のようなチョコレートが詰まっているものだった。われわれはそれをパッケージの色からホワイトパッケージと呼んでいた。かなりの甘さがあり、疲れているときによく兵士が口にしていた。不思議と疲れが取れるのだ。実は中に麻薬が入っているのではないかとの噂もあった。

私はそれを数粒手に取って口に放り込んだ。

それを見てケビンが言った。

「あんた、まだブラックパッケージ持ってるかい?」

私は答えた。

「持ってるさ」

ブラックパッケージとは、このチョコレートと共に一箱だけ支給されるものだ。ホワイトパッケージと同じ大きさ、同じ形状をしている。しかしパッケージの色は違って黒である。そしてもっとも違うのは中身がチョコレートではなく毒薬であるということだ。ご丁寧にチョコレートと同じ形、色で作られている。よく比べると若干黒味がかっているようだが。以前一人の兵士が拳銃自殺をして敵に居場所を察知されたのを期に支給されるようになった。つまり死にたきゃ勝手にこれで死ねというわけだ。

「おれ、それを食ったやつと話をしたんだよ、どんな味かって聞いたらビターだって答えやがった、クックックッ」

ケビンはそう言って笑った。

心身ともに疲れ果てる戦場、同僚でこれを食ったやつは少なくなかった。

「男ども、ボーっとしてないで、食料を調達する方法でも考えたら?」

マリアが言った。

男ばかりの部隊の紅一点で、且つこの隊の隊長である。

冷静な士官候補、彼女にとってはこの戦争もキャリアのひとつに過ぎないのだろう。

彼女は自分の恋人トニーがブラックパッケージを食べた時も止めよともしなかった。その原因は彼女が昇進のためにトニーを捨て、上司と付き合ったことに起因していた。彼女がこの若さで一個師団の隊長になれたのはそのおかげなのだ。

ケビンが言った。

「食料っていったって、それこそチョコレートぐらいしかないぜ」

その時三人の目の前を何かが走る抜けた。

ケビンが叫んだ。

「野うさぎだ!」

彼はそれを追いかけて捕まえようとしたが、そんなことは到底出来なかった。

彼が叫んだ。

「くそーすばしっこいウサギめ、拳銃で打ち抜いてやる!」

マリアが言った。

「ばかやめて、敵に知られるわ!何かほかに方法があるかもしれない。そうだわブラックパッケージよ!」

「ブラックパッケージがどうかしたか?」

私が聞くとマリアが答えた。

「それを撒いておけばウサギが食べるかもしれないでしょ」

ケビンが言った。

「なるほど、そうして毒で死んだウサギを食料にするってわけか。よし、もっているブラックパッケージを集めろ」

私とマリアは懐から出したブラックパッケージから中身を取り出しケビンに渡した。

「ウサギの居そうなところに撒いてくる」

ケビンはそう言って森の方に向かった。

ケビンが見えなくなるとマリアが言った。

「あなたのブラックパッケージの封、開いていたわね」

気づかれないようにしたつもりだったが、彼女は見抜いていたようだ。そう、私は何度かこれを食べようと試みたことがあるのだ。

マリアが言った。

「バカなこと考えないで」

怒ってる風でもあり、悲しんでいる風でもあった。

マリアは懐からホワイトパッケージを出して私に渡した。

「これは?」

私が聞くと彼女は言った。

「今日はバレンタインよ、忘れたかしら?」

なるほど、しかし彼女がこんなことをするなんて意外な感じがした。


ケビンはいくら待っても戻ってこなかった。

私とマリアは彼を探すことにした。

そして彼を探し当てた。しかし死体としてだった。

マリアが言った。

「敵が潜んでいるってことね、手分けして探しましょう」

「その前に言うことはないのか、同僚が死んだんだ!」

私は思わず叫んだ。

マリアは言った。

「戦場でセンチメンタルは禁物よ」

戦場で生き抜くためにはそれぐらいの図太さが必要なのだろう。しかし私にはとても耐えられそうにない。

マリアが言った。

「あなたは森の方を調べて、私はこっちを調べるわ」

私は言われたとおりに森の方に歩いた

『神様、何とかしてくれ』私は心の中で何度も祈った。

しばらく歩くと一匹の野うさぎが死んでいた。

そしてその周りにはいくつ物黒い小さな物が落ちている。

なるほど、神様からのバレンタインプレゼントって訳か。

私はそのひとつを手に取った。

すると、その時後ろから声が聞こえた。

「バカ、やめなさい!」

マリアだった。

しかし私は構わずそれを口に含んだ。

ケビンが言ったと通りだ、それはかなりのビターな味だった。

「お願い、やめて!」

マリアは悲痛な叫びをあげた。

しかし私は止めなかった。それを飲み込んだ。

胃の中に不快な感覚が広がった。

薄れていく意識のなか、マリアが私に言った。

「それ、ウサギの糞よ!」

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ヤバイ。

おもしろい!
マリアいいなマリア。
かわいいです。

2007/06/17 09:12 | ザンバラ [ 編集 ]


ありがとうございます!(^^

2007/06/17 12:55 | 山川 [ 編集 ]


初めまして。mixiの足跡から辿りつきました。
唯一の正しい小説の書き方というものが存在しないため、絶対の参考とはいえませんが、小説において、~と言った。~と答えた。~だった。(完了形)を乱発するのはあまりよいとはいえません。
特に前者ふたつは文章の流れが悪くなりますし、短い文章で勝負するショートショートの場合、一行の持つ重要性が極めて高いため、容量的にみて圧倒的に不利だからです。
台詞(「」)だけで言葉を発したことは明確なので、削れる個所は削り新しい描写を増やすことで、同容量でもボリュームのある物語になると思います。

それが正しいと言えないのが心苦しいのですが、考えたことのない点であれば、試してみるのも一法であると思います。
これからより一層の上達を願っています。頑張ってください。

2007/07/24 01:22 | 木塚たゆち [ 編集 ]


おお~なるほど、今度から気をつけてみます。
貴重なご意見ありがとうございます!

2007/07/24 15:22 | 山川 [ 編集 ]


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