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2007/07/13 (Fri) 千年桜

ジオコレ 情景コレクション ザ・樹木 004 桜 中国の奥地にあるある険しい山、その頂上には千年咲き続けているという桜、千年桜があるという。

その桜を見た者には永遠の幸福が訪れるらしい。

しかしその桜を見たものはいない、それほどたどり着くのが難しい険しい山だったのだ。

単に体力があるだけではだめで、それはとてつもない精神力を有する人間だけだ頂上にたどり着けることが出来るという。

そして今日、一人の男がその頂上に挑んでいた。千年桜を見るために。

いや、目的などどうでも良かった、男は自分を試したかっただけだ。自分自身を見極めるために、そして恩師へ強くなった自分を見てもらうために。

わずか十年前、男はそんなことなど考えない愚かな人間だった。

その男が後に後に彼の恩師となる寺の住職と会うのは、男が安酒をたらふく飲んで、酔っ払って理性を失い住職の寺の桜の木をへし折ったのがきっかけだった。

住職はその折れた桜の木の弁済分、寺で働いて返すようにと男に雑用を言いつけた。

男は負い目もあり、しぶしぶその言いつけに従うことにした。

男に言いつけられたのはまさに修行と言っていい仕事だった。男は大変な苦労を強いられた。何よりもつらかったのは大好きな酒を飲めないことだった。

しかししばらくすると、男は自分がなんともいえない充実感を感じていることに気が付いた。

住職は見抜いていた。男は不幸が続き少々ひねくれていたが、根はまっすぐな男だ。精神を叩きなおしてやれば、利口さを身につけることが出来るだろう。

男は住職の見込みどおり、修行の末にどんどんと人間的成長を果たし、高い体力と精神力、そして利口さを身につけて行った。あれほど好きだった酒もきっぱりとやめることが出来た。

そして寺で五年ほど過ごした後、男はさらに高みを目指すために世界漫遊の修行旅をすることになる。

男は世界各国の修行場をめぐり、血のにじむような修行に明け暮れた。

そして五年、その修行旅の最終目的がこの山の頂上の千年桜を見ることだった。

男はほとんど断崖絶壁の山肌をよじ登る、そしてついに頂上に着いた。

そこには満開に咲く大きな桜の木が咲いていた。千年桜だった。

男がその桜に見惚れていると一人の老人が男に近づいてきた。

老人は言った。

「ほお、久しぶりに人が訪ねてきたな、ここまでたどり着くとはたいした男だ」

男は老人に言った。

「恐縮です、失礼ですがあなた様は?」

「私の名などどうでもいいじゃろう、お前と同じ道を求める者じゃ、少しばかりの超能力は有しておるがの」

「そうですか、さぞかし格の高い仙人とお見受けしました、老師と呼ばせてください」

「好きにすればええ」

「ところで老師、この桜を見たものには永遠の幸福が訪れると下界で聞いたことがあるのですが」

「あながち外れてはおらん、だが見るだけではだめだ」

「と、申しますと?」

「この桜の木の枝を、折って自宅に持ち帰れば幸福になれる」

「なんですって! この見事な桜の木の枝を折るですって!」

「そうじゃ、どうするかね?」

「……こんな見事な桜の木の枝を折るなんて出来ない、こんなものを拝めただけで私には眼福です、このまま山を降りることにします」

「うむ、己の欲望に勝つとはたいした精神力だ、よろしい、わしもこの桜の及ばずながら超能力の持ち主じゃ、お前さんの望むものをひとつ与えてやろう、何でも言ってみろ」

「そうですか、では安酒をたらふくいただきたい」

(了)



  解説

この後男はよっばらって桜の木の枝を折ってしまったので、仕方なく持ち帰ったというのがオチです。
そういう知恵が働くようになったというわけですね。
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