コバナシ//明快に面白い! シュールはなし! 爆笑・お笑い・ショートショート・ジョーク短編集
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2007/07/13 (Fri) 桜は見ていた

500ピース 満開の三春滝桜 75-256――桜は見ていた。人々の営みを。

そよ風に乗ってその桜の種が、小さな町の丘の上のお寺の境内に降り立ったのはおよそ百年前。それ以来その桜はその丘から町の風景、そして人々の営みを見続けることになる。

――桜は見ていた。人々の恐怖を。

第二次世界大戦、町は米軍の空襲によって焦土と化した。その桜のすぐ近くにも爆弾によって大きな穴が開けられたが、その桜は運良く難を逃れることが出来た。

――桜は見ていた。人々の力強さを。

戦後、何もない状態からの出発となった町の人々にとって、丘の上に奇跡的に咲く、その桜は大きな希望となった。人々はその桜の力強さを心の支えにして町の復興に力を尽くした。

――桜は見ていた。人々の欲望を。

バブル景気。人々は何かに駆り立てられるようにお金を求めた。土地が金を生むという神話は町の様相を大きく変えてしまった。そしてその矛先は桜の咲く丘にも向けられた。桜を切って高級マンションを立てようとの計画が持ち上がっていた。

――桜は見ていた。人々の優しさを。

町の人々は立ち上がった。その昔、その桜が人々の大きな心の支えになったということを忘れていはいなかったのだ。心ある人々が桜を地上げから守るために戦った。そのうちバブルは弾け、計画自体がなくなった。町の人々は勝ったのだ。

――桜は見ていた。人々の心の移り変わりを。

老いた桜は昔のように美しい花を咲かすことは無くなっていた。人々の興味は桜から失われていった。そしてバブル景気に続く新たな好景気。再びその桜を切り倒そうという計画が持ち上がった。しかしすでにこれに反対する人々は居なかった。

チェーンソウは唸りを上げて太い幹を切断する。幹はメシメシを音を立てて倒されていく。町の人々は一応同情をもってその桜の最後を見守った。

ドスンという激しい音を立てて桜の木が地面に倒された。するとその幹の切断面からコロンと白い丸いバスケットボール大の玉が二つ、転がり出てきた。よく見ろと黒い大きな丸い点がついていた。人々はそれを見ると仰天した。それはなんと巨大な目玉だったのだ。腰を抜かすもの、悲鳴を上げて逃げ出すもの、祈りだすもの、とにかく人々は慌てふためいていた。

――桜は考えていた。根っこを掘り返すともっと仰天するだろうな、こいつら。



  解説

 根っこを掘り返して見つかったのは“考えていた”と、いうことで“脳”です。
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