コバナシ//明快に面白い! シュールはなし! 爆笑・お笑い・ショートショート・ジョーク短編集
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2007/06/14 (Thu) 小判猫

九谷焼 2.8号招猫 小判のり 黄盛 学校から帰ってきた娘は玄関で泣きながら言った。

「パパ、表にいるの……」

なんだろうと思い玄関を開けると、そこにはダンボールが置いてあった。中には子猫が入っていた。

私は娘に言った。

「動物はマンションでは飼えないって言っているだろう」

「だけど、このままだとこの子しんじゃうよ~」

娘は泣きじゃくりながら言った。

ほとんど生まれたばかりの子猫のようだ、確かにかなり衰弱している。

「……とにかくミルクを飲ませてやろう」

「うん!」

娘はうなずいて、子猫を抱えて台所に連れて行った。


その後、娘は夕食も忘れて子猫の世話をした。

妻が言った。

「ねえ、このマンションじゃ飼えないでしょ」

「そうだな……」

「一戸建てに住めたらこんな気苦労もしなくて済むのにね」

妻は住宅パンフレットをめくりながら言った。

「あと五年すれば頭金が貯まるだろう」

私はそう言ってタバコをもみ消した。

その時娘が叫んだ。

「パパ!この子何か吐き出した!」

私は言った。

「毛玉だろう」

しかしそれは毛玉ではなかった。光る小さなプレートだった。端的に言うと小さな小判だった。

「なるほど猫に小判って訳か」

と、私は言った。

妻が言った。

「おもちゃのでもでも飲み込んでいたのかしら」

「だろうね」


しかし、その現象はその日だけではなかった。

次の日も一枚、また次の日も一枚。そしてついに、小判は十枚になった。

さすがにこれはおかしい、それにこの小判おもちゃとは思えないほど良く出来ている。

私はとにかくこれが何か専門家に調べてもらうことにした。

するとびっくりすることが分かった。これは本物の金で出来ていたのだ。

つまり本物の小判だったのだ!


その後も子猫は小判を吐き続けた。

小判はすでにたいした量になっていた。

妻は言った。

「すごいわ、これだけあれば住宅の頭金には十分なるわね!」

「ああ、しかもまだまだはき続けてるぞ、頭金どころか一括だ!」


しかしそううまくは行かなかった。

子猫は一週間後に娘の懸命の看護もむなしく死んでしまった。

子猫には立派な墓を作ってやった。

墓参りを済ませ、私は言った。

「どうせならローン分全部吐き出してから死んでくれたらよかったんだけどな~」

「あなた!」妻がすごい形相で私を睨み付けた。

娘は目に涙をいっぱい貯めていた。

「じょ、冗談だよ、そんなに怒るなよ、ははは……」


娘は一週間ほどふさぎこんでいたが、次第に元気を取り戻していた。

妻は住宅のローンの契約を済ませ、ご機嫌だった。

妻は言った。

「これで何を飼っても文句は言われないわね」


新しい一戸建ての家に引っ越して三日後、娘が玄関で言った。

「パパ、表にいるの……」

「そうか、もう飼えないなんて言わないよ」

「ほんと!」

「ああ、また何か吐いてくれたらいいね」

「ええ、吐くわ!」

「なに、ほんとうか!」

「ええ!すごくおっきいのを吐くわ!すごくきれいよ、いま見せるわね」

娘はそう言ってポケットをまさぐった。

「おっきい?子猫じゃないのか」

「ええ、子猫じゃないわ」

「そりゃ結構だ」

私はほくそえんだ。

「ほらみて」

娘はそう言ってポケットから取り出した。

娘の手には特大の真珠が握られていた。

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2007/06/12 (Tue) 戦場のバレンタイン

第二次世界大戦航空機 [ポスター] (-)  200X年2月14日某国国境付近 。

第3部隊が本体からはぐれてすでに10時間。その間多くの同僚が死んだ。残ったのは三人。ケビン、マリア、そして私だ。三人の疲労はすでにピークに達していた。

私は支給されていたチョコレートをポケットから取り出した。

それは小さな白い円筒状のパッケージに小さな錠剤のようなチョコレートが詰まっているものだった。われわれはそれをパッケージの色からホワイトパッケージと呼んでいた。かなりの甘さがあり、疲れているときによく兵士が口にしていた。不思議と疲れが取れるのだ。実は中に麻薬が入っているのではないかとの噂もあった。

私はそれを数粒手に取って口に放り込んだ。

それを見てケビンが言った。

「あんた、まだブラックパッケージ持ってるかい?」

私は答えた。

「持ってるさ」

ブラックパッケージとは、このチョコレートと共に一箱だけ支給されるものだ。ホワイトパッケージと同じ大きさ、同じ形状をしている。しかしパッケージの色は違って黒である。そしてもっとも違うのは中身がチョコレートではなく毒薬であるということだ。ご丁寧にチョコレートと同じ形、色で作られている。よく比べると若干黒味がかっているようだが。以前一人の兵士が拳銃自殺をして敵に居場所を察知されたのを期に支給されるようになった。つまり死にたきゃ勝手にこれで死ねというわけだ。

「おれ、それを食ったやつと話をしたんだよ、どんな味かって聞いたらビターだって答えやがった、クックックッ」

ケビンはそう言って笑った。

心身ともに疲れ果てる戦場、同僚でこれを食ったやつは少なくなかった。

「男ども、ボーっとしてないで、食料を調達する方法でも考えたら?」

マリアが言った。

男ばかりの部隊の紅一点で、且つこの隊の隊長である。

冷静な士官候補、彼女にとってはこの戦争もキャリアのひとつに過ぎないのだろう。

彼女は自分の恋人トニーがブラックパッケージを食べた時も止めよともしなかった。その原因は彼女が昇進のためにトニーを捨て、上司と付き合ったことに起因していた。彼女がこの若さで一個師団の隊長になれたのはそのおかげなのだ。

ケビンが言った。

「食料っていったって、それこそチョコレートぐらいしかないぜ」

その時三人の目の前を何かが走る抜けた。

ケビンが叫んだ。

「野うさぎだ!」

彼はそれを追いかけて捕まえようとしたが、そんなことは到底出来なかった。

彼が叫んだ。

「くそーすばしっこいウサギめ、拳銃で打ち抜いてやる!」

マリアが言った。

「ばかやめて、敵に知られるわ!何かほかに方法があるかもしれない。そうだわブラックパッケージよ!」

「ブラックパッケージがどうかしたか?」

私が聞くとマリアが答えた。

「それを撒いておけばウサギが食べるかもしれないでしょ」

ケビンが言った。

「なるほど、そうして毒で死んだウサギを食料にするってわけか。よし、もっているブラックパッケージを集めろ」

私とマリアは懐から出したブラックパッケージから中身を取り出しケビンに渡した。

「ウサギの居そうなところに撒いてくる」

ケビンはそう言って森の方に向かった。

ケビンが見えなくなるとマリアが言った。

「あなたのブラックパッケージの封、開いていたわね」

気づかれないようにしたつもりだったが、彼女は見抜いていたようだ。そう、私は何度かこれを食べようと試みたことがあるのだ。

マリアが言った。

「バカなこと考えないで」

怒ってる風でもあり、悲しんでいる風でもあった。

マリアは懐からホワイトパッケージを出して私に渡した。

「これは?」

私が聞くと彼女は言った。

「今日はバレンタインよ、忘れたかしら?」

なるほど、しかし彼女がこんなことをするなんて意外な感じがした。


ケビンはいくら待っても戻ってこなかった。

私とマリアは彼を探すことにした。

そして彼を探し当てた。しかし死体としてだった。

マリアが言った。

「敵が潜んでいるってことね、手分けして探しましょう」

「その前に言うことはないのか、同僚が死んだんだ!」

私は思わず叫んだ。

マリアは言った。

「戦場でセンチメンタルは禁物よ」

戦場で生き抜くためにはそれぐらいの図太さが必要なのだろう。しかし私にはとても耐えられそうにない。

マリアが言った。

「あなたは森の方を調べて、私はこっちを調べるわ」

私は言われたとおりに森の方に歩いた

『神様、何とかしてくれ』私は心の中で何度も祈った。

しばらく歩くと一匹の野うさぎが死んでいた。

そしてその周りにはいくつ物黒い小さな物が落ちている。

なるほど、神様からのバレンタインプレゼントって訳か。

私はそのひとつを手に取った。

すると、その時後ろから声が聞こえた。

「バカ、やめなさい!」

マリアだった。

しかし私は構わずそれを口に含んだ。

ケビンが言ったと通りだ、それはかなりのビターな味だった。

「お願い、やめて!」

マリアは悲痛な叫びをあげた。

しかし私は止めなかった。それを飲み込んだ。

胃の中に不快な感覚が広がった。

薄れていく意識のなか、マリアが私に言った。

「それ、ウサギの糞よ!」

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